午後の子 ?/木立 悟
 



無数の雪
無数の水紋
咲きひらくものたちの
光の息つぎ
夜の終わりに立つ銀河の群れ
山へと向かう道の上に
降りしきる光のなかを
かがやいている


けものが空を揺らす
歩きつづける子は振り返る
冬の最後の翼のように
地に咲く花は光に還る
天使が孕んだけものの子
凍えた天地の間で身をよじる


人に追われた鳥たちが
古いアスファルトの上ではばたいている
褪せた人工の青色が
わずかに雪を染めている
両側を山にはさまれた
薄暗い飛行場の廃墟から
かなえられたあとの願いのように
行くあてなく鳥たちは飛び立ってゆく


一羽の鳥が
歩き続ける子の胸に降り
願いの終わりに
夜の終わりにかがやきながら
けものの子もまた いつの日か歩む
銀河への道を指し示す









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