午後の子/木立 悟
灰色の光
開かれた窓
庭の切られた木の前に
ひとりの午後が立っている
乱れた髪の
乱れた羽の
飛べない午後が立っている
雨雲と空の境いめをふちどる
青い骨の火
川辺に立つ子が
濡れた光をあびている
沈黙と踊ることにも
大きな葉の下にいることにも疲れて
夜へとつながる坂をのぼる
水路にまだらな星が来て
流れの上でまたたいている
小さな庭から遠く離れて
空へ 地へ 手を振りながら
ささやくようにかすかな
かがやきの夜を歩き
有限の子は 鳥の子は
命のめぐりを越えてゆく
どこまでも午後の腕(かいな)もて
どこまでも光の器もて
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