さよならわたし/umineko
 
じみと画面に見入ってしまう。

ほんとはね。ぜんぜん、来たくなかった。ある意味、それどころじゃなかった。早くひとりになりたかった。私は夕方、いわれない中傷を浴びせられて、ただ笑っているしかなかった。ごまかせ、私。ごまかせ、私。居心地の悪いソファーの上で、ソングブックをぱらぱらめくる。

主賓の女の子が「ハナミヅキ」を歌う。一青窈さんのバラードだ。

…君と好きな人が100年続きますように…

これから、遠い街で新しい暮らしを踏み出す彼女に、なんて幸せな歌だろう。未来は夢見るためにあるのだ。小さく口ずさみながら、私は、明日から私の身に降り注ぐ孤独を想う。ほんとうは、来たくなかった。歌なんて歌ってる場合じゃないのだ。傷の大きく広がらないうちに、すべきことはたくさんあるのに。

だけど。
たぶん、私はきっと出かける。たとえ私の親が死んでも、何食わぬ顔をして。
悲しみは。私の中にさえあればいい。誰かと分け合うのは喜びだけだ。

さよなら、わたし。
さよなら、私。

あなたにだって教えない。
 
 
 

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