「 双月譚。 」/PULL.
夜は見ていた。
すべての事の起こりと、
すべての争いの結末を。
闇夜は考えた。
この夜の理を、
はじまりに孵す術を。
そして結論が出た。
呑み込まれる瞬間、
太陽は思った。
「ひとつ月は、
なぜ消えたのだ?。」
残った星達は掻き集められ、
命乞いをする暇もなく、
これも呑まれた。
呑まれながら、
彼星らは思った。
「ふたつ月はどこに。」
すべてを呑み終えると、
闇夜は自らの呼吸を止めた。
それは夜の理、
闇夜の息吹。
緩やかな痙攣。
柔らかな弛緩。
薄れ逝く意識の最後、
闇夜は呟いた。
「これでいい。」
闇夜は死んだ。
こうして闇夜は、
唯の夜になった。
明けることも、
暮れることもない。
誰もいない夜、
今宵も一つ昇る。
ふたつ月ひとり。
ひとつ月は、
あの夜。
あなたが喰べた。
了。
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