「 双月譚。 」/PULL.
 
   





ひとつ月を見ない。

最後に彼月を見たのは、
四つ前の七日双月であった。




双月。

ひとつ月と、
ふたつ月は、
兄弟月である。

大変に仲の好い兄弟月で、
二十七夜を交互に分け合い。
昇り満ち欠けて、
沈んでいた。

気性が荒く、
我が侭なふたつ月は、
他の星達や太陽と、
度々面倒を起こしたが。

柔和な性格で知られ、
弟月思いでもある、
ひとつ月が、
いつも何とか取りなして、
事なきを得ていた。

ひとつ月はふたつ月を。
ふたつ月はひとつ月を。
互いに思いやり、
助け、支え合っていた。


[次のページ]
戻る   Point(8)