諸断連想(冬)/木立 悟
来るはずのないものを待つ
冬の蜘蛛のように
終わることを知らないひとつの季節と
同じ永さのなかでふるえる
汚緑の湖に打ち寄せるオーロラ
波の奥から
太陽を手にした盲人があらわれ
世界は渇く
曇の下にひろがる光の輪
水を雨に変えてゆく
手を切る草が集まり
原になり
ざわめいている
砂の音
砂の声
雨が去った後の午後に
行為から行為へとわたる虹
他の手のひらと手のひらを合わせ
次に起こることを待つ子の瞳
壊れた椅子に座り
壊れた椅子を見つめていた
冬の唸り声が
ひとつ ひとつ
永い時間をかけ かたちを捨てながら
夜へ夜へと飛び去っていった
中庭の椅子
雪の下の椅子
来るはずのないものを待っていた
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