十月のバラッド/狸亭
 

遠い日の雪ふる夜あなたの瞳の中にみた海辺の足跡
理知のかがやきをひめて波間にただようほのあかり
やるせない吐息にうっすらとくもったガラスの部屋
窓に貼りついた蛾の群れが突如としてまっさかさま
劣悪な性(さが)にたえるように下降しながらちぎれみだれ
いまわしい欲望を吐きつづけるぬれた唾液腺染色体
すきとおったぶきみな色がかなでる濃艶なブルース
鬼気せまるつめたい十月のバラッドあたらしい形式

都心からすこしはなれて倉庫を改造したアトリエと
隣接した住居という格好の場所に気づいて里がえり
やっぱりちょっと不便だが流言蜚語を逃れていいや
まあそんなことでいろいろあって独
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