午後と水晶/木立 悟
門をとりまく
黒い布の花
庭を横切り
午後の光になっていく猫
風のなかを振り返り
雲を見つめる目を閉じる
暗闇に目が慣れて
最初に見えてくるものひとつひとつが
そのままでいることの悲しみに満ちているのは
応えが無いことを知っているから
独りであることを知っているから
冬の樹の環の中心に
黒と金の目の鉱の子が居て
想いが届く世界を想う
人の作り出したものすべてが
それぞれを生んださびしさと幻を超えて
見つめることのできるかがやきのなかでひとつになり
もう一度あたたかく
独りに分かれてゆくように
もう二度とつめたく
まとまることのないように
話し終えたものから先に去っていき
見わたすと誰も居ず 何も残らない
冬の野外の劇場で
独りだけ踊りつづけ
時間を超える者がいる
時間を超える花がある
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