野良犬から見た世界/ベンジャミン
家の近くで見たのは野良犬の親子
道路をわたるときは子犬のほうが先で
親犬はあとからついてゆく
一見普通の光景だけど
親犬は眼が見えない
だから子犬が前を歩き
親犬はその匂いを頼りについてゆく
容赦ないスピードで通り過ぎてゆく車の隙間を
小学生より正確に左右を確認して子犬は歩く
ある朝
子犬が車にひかれていた
そいつをひいた車は眼が見えなかったのだろうか
それはもう子犬ではなくて
親犬もまた
もう親犬ではなくなってしまった
雨が降っていた
車は鉄のかたまりで意思を持たない
意思を持たない車が人間を運んでいる
鈍い衝撃がハンドルから伝
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