キリシタス/馬野ミキ
るされたりしていなかった
彼は十字架で一人ふくよかで血色もよかった
ただ人々は痩せこけたキリストのイメージや、そうして手を合わせて俯いたりすることを愛した
彼は国中で最もふくよかで血色がよいまま七年間十字架に吊るされた
それはあまりにもイカれた一つの風景であった
彼はやっぱりただの愛に溢れた大工だったので
三日後に復活するようなことは有り得なかったが、
ただ何人かが彼が死んだ三日後に彼のギャグを思い出して笑った
それから人々は、この忌々しい事件を忘れる為に彼を神に仕立て上げた
全員一致で殺した人間に最高の栄誉を与えたのだ
つまり権力者も奴隷も村人も聖者もすべてグルなのだ
これが神という概念のはじまりである-
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