飛ぶプラチナ/蒸発王
 
あの眩暈のしそうな
白い台風が去り
三日が過ぎた

路上の名残雪は
鋭利な透明を帯び
庭の雪だるまは
縮こまった

そんな
冬の日


自転車の前に
娘を乗せて走っていると
ふいに
娘が悲鳴を上げた

聞けば
目の中に
ガラスが入ったという

慌てながらも
こすらないように注意して
娘の目蓋を持ち上げたが
そこには
何も無い


本当にガラスだった?
と聞くと

娘は
今も空にガラスが飛んでいる
という


顔をあげると
青い空の背景に
チラチラと光るものが
一面に飛んでいる

風の唸る音に
目をやれば
高層マンションに
風が体当たりしているところだった


なるほど

風に煽られた雪が
光を反射して
飛びまわっているのだ


一面に
飛ぶ

プラチナ


綺麗ね
と言うと
痛くないと知った娘の
元気な返事がこだました



飛ぶ
プラチナ




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