正三角形/石畑由紀子
らんららん 出張中の男の洗濯をしようと乙女心を持参しアパートへ向かったら
まさに今 女にまたがろうとしている男と遭遇
鍵をかけていても私は合鍵を持っているのだから男の防衛策意味なし
セコムしてないセキュリティーの甘さを憎む 嗚呼 これが噂にきいていた男というもの
思わず手から滑り落ちた乙女心がフローリングの床でグシャッと割れて
散らばった下着をそそくさと集めていた女がその音にビクッと反応
感度良し 私よりも良く鳴く恐れあり 間一髪で足を運ばせた洗濯物の山に感謝
おかえり、と男は場違いな挨拶を発信してきたので私はそれを着信拒否
だってそれは明日の私の台詞 私の台詞
男と私と女 点と
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