階段を登れば/松本 卓也
 
この階段さえ登れば
独り呟いて見上げた
4日分の荷物を詰めた
旅行バックを引っさげて

堕落した生活を物語る
10段ごとの一服休憩
小春日和の早朝に
肩で息する三十路前

この階段さえ登れば
旅館の女将の言葉では
10分くらいで目的地
3本目に火をつけて

掛け声と共に登りきる
視線を巡らし眺めると
小高い丘の天辺で
今日の作業場そびえ立つ
戻る   Point(1)