満ちる光/木立 悟
雷(いかずち)の生きものが道をよこぎり
こぼれた光に生える影
風もなく
ひとつひとつがたなびいている
たがいちがいにつづくかたち
夜の蒼い洞を抜け
何もないところにとどろくもの
葉のような雪を連れてくるもの
屋根からしたたる錆び水が
雪をとかして燃え沈み
冬でも春でもない土の香を
吹雪へと激しく放っている
曇はいつまでもじっとしていて
建物はみな空へ叫んでいる
通じることはあるのだろうか
通じたことはあるのだろうか
雪のなかに殻だけを残し
鴉は卵を食べ終える
空をすぎる幾つもの爆音
誕生のようにあおぎ見る
きらびやかな凹凸(おうとつ)に
包まれてゆくぬかるみたち
夜に満ちるものの行方には
電柱ばかりが寄りそっている
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