兄妹/和歌こゆみ
 
夜の始まりがわからなくなった
いつからか
それは心地よさを覚えたから
朝が怖いのとはまたちがう

切りとったようなかたちをした窓に
頬をおしつけてみる
冷たさに外の空気を感じて
ゆうべの会話を思い出す 

あの人は結局何が言いたかったのだろう
いろいろなことを話しすぎて
みえなくなっていたけど
とても大切なものがあって
それを守れなくなることをおそれていたのだ
きっと

またいつかあんな夜があるのだろうか
今度顔をあわせたときには
おそらく何もなかったかのように
憎まれ口をたたきあうのだろう
私と貴方
妹でしかなく
兄でしかない役割のまま

私はもうこどもではないのだ
気が付いてしまって
呆然(ぼうぜん)とした
絶望でもなく
ましてや歓喜でもない
こういう思いをなんと呼ぶのだろう

切り落としたばかりの髪は
もう私を暖めるほどの厚みをもたない
朝でもなく 夜でもない
こんな時間にひとり
灯りのきえた家々を眺めている


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