九月のバラッド/狸亭
ひかりかがやく風のとうめいな冷気が頬をなでる
この都会にもあかるい季節がめぐってきた
まつわりつく悪夢にまたしても人々はさわぎたてる
真夏のように感情をたかぶらせみえてこない{ルビ明日=あした}
大国のエゴやら地球の汚染という記号もみな彼方
「した した した」「つた つた つた」折口信夫
太古の闇からきりもなくきこえてくる「発生」の祝歌(いわいうた)
『死者の書』を読み解いてゆく松浦寿輝の執拗な愛撫
熱風がふきぬけてゆく青空にまたしてもうかびでる
きみは永遠のような顔つきをしてやってきた
たどたどしい文字のつらなりがおれをしばりつける
生誕百年記念金子光晴の世界―
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