Wednesday Night/吉岡孝次
 
名詞で作られた「歌」
灰皿を磨いた続き
また 「雨」

     *

明日
帰る
旧い時よ
さよならってつぶやいた

     *

季節を失う
と書き留めた途端の見事な青い空
向いの丘に積まれた家々が
すいっ と望める
いい朝

     *

一九八八年
勤労感謝の日は
水曜日にあたった
午後から薄い雲が斑(まだら)に
ひろがりはじめて
粗描きの画布は
一生粗描きのまま袋の中にしまう
そういえば六時から
学寮の連中と銀座で飲む約束をしていたのだった
いけないなあ
こんなことでは
もっと計画的に
休日は過ごさなきゃ
世間に対してこっそり申し開きするが実際
片付けであわただしく
あわただしいのに
奇妙な安らぎを覚えているのが自分でもわかる
ねじれているのか 真っ直ぐなのか
イーゼルが
がらがら音を立てて崩れてしまった
リアリズムを愛したソルジャー・ボーイよ
きみの名を録して
成田発のAeroplane
斜めに
静止する

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