Wednesday Night/吉岡孝次
 

前髪から覗く横顔の目は
一重瞼で
甘い
夕刻のかすかな影をかぎとっているのだろうか
その眼差しは思いがけず手前で落ちて
厚い背を縦にのばしたまま
手を脚にそっと置いている
いつもは文庫本をひろげているのに
日常から抜き放たれた彼女はさらに大きなも
 のに身を委ねているかのようだ
窓の外を雲が流れ去っていく
少女はその雲を目で追いはじめる
「好き」が遠のいていく

     *

思惑のにじむ夕暮れ
水は逃げ場を失い

     *

洗われて日は昇る 家並みの彼方
小学校に面した桜通りを滑走し
路地から路地へそして駅へ
駐輪場へは羽根をひるがえすよ
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