序=彼について/太郎冠者
 
煙草の灰でさえ風に乗れるのだからと
三年前彼はドイツに向かった
かつて大量の亡命者たちが生まれた場所
彼はぶかぶかの背広姿で
少し大きいねと
何でもなさそうに笑い
さよならと言った
僕は涙を流す
争・戦争・戦・戦・戦・戦争
流れるのは不整脈のせい

 僕は李さんに向かって話している
 大川周明の思想的限界をどこに引くかについて
 大東亜戦争を生きた人と
 「太平洋戦争」を生きた僕と
 祖国解放戦争を生きた李さんと
 不仲している

一九四五年八月十五日、新生日本の始まり
文化文化文化文化文化!
「朝鮮戦争が起きて良かったです」
「私もそう思います。他国で戦
[次のページ]
戻る   Point(1)