冬とうたごえ/木立 悟
見つめつづける水の道の色
何もかもみどりのみどりから
あふれ伝い来るみどりのすがた
何年も何年も
ずっと音を鳴らしつづけて
ずっとずっと歩きつづけて
ついに月夜の野原には
一度も出会えなかった音楽隊や
むらさきにかえるむらさき
無数の空でできた筒を
迷うことなく行き来するうたごえが
盗人の道を照らす手のひら
ひとつだけかがやく手のひらを見つめている
吹雪のなかをゆく
ひとかたまりの幼い響き
冷たい水を手ですくい手ですくい
そのままのかたちの
水紋の陽に触れてゆく
飲み干すためではなく
ただあたたかく手わたすために
手にすくうそのままのかたちの
炎のうたに触れてゆく
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