一日は、臨界する空の/霜天
 
笑いながら、回転している
昔から、キャッチボールだけは得意だった


バスの運転手が行き先のアナウンスを
今日は自分の声で告げているけれど
次第に周りの景色とは関係ない
話ばかりになっていく
「次は、次は──」
その後が続かないバスの中は
誰かが泣いている気配がした
僕だったかもしれない


疲れた顔で歌う二人組み
ギターをかき鳴らして
誰かのために歌っている、はずで
どこかで聞いたことがある気がして
おい、それは僕の言葉だと
掴みかかろうとするけれど
自分のもののはずの言葉も
どこから来たのか
結局思い出せない



僕らが空の、境界に触れると
今日が今日の終わりだと、ようやくで気付く
一日は、臨界する空の向こう
いつまでも小さくならないので
ここで夕暮れる世界の音を
いつまでも聞いている、ことになる

一枚の部屋に絵を描いている
いつか、そんな日のために
過ぎ去ったものが透明な箱に入れられて
見えなくなる
そうなる前に

ここで、一日が閉じる
戻る   Point(11)