黒蝶々/蒸発王
明け方に
貴方様の
その
乱れた
長い黒髪を
結い上げるのが
私のお仕事でございました
脱色も
染色も無い
真っ黒な
艶やかな
濡羽色の御髪に
櫛(くし)が入るのを見るのは
この六年
私の絶頂の楽しみでございました
貴方様は
少々哀しげに
その眉をお寄せになって
私の身体を持ち上げると
その
御髪を束ねた柄に
私を結びつけるのです
黒い私の身体は
貴方様の御髪に馴染んで
浮び上がるような
蝶々模様を
貴方様の御髪に飾るのです
白く細い指が
私の身体から離れる時
今日
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