貧しい人/ベンジャミン
 


貧しい人の手は、いつも淋しいかたちをしていて
貧しい人の目は、いつも悲しい言葉を探している


(本当は、とても綺麗な詩が書きたいのです)


雪降る夜の寒さは、震える指を動かして
して、そして
けして真っ直ぐには語りません

貧しい人は何も欲しがらないかわりに
ただ、漠然と求めてしまうからです

だから簡単に死を語る人を嫌います
簡単に死ぬ方法を知っているからです

貧しい人は、貧しさに耐える心を持っています
そうでなければ、生きて行けないのです


(本当は、とても綺麗な詩が書きたいのに)

貧しい人の目は、全ての色を見ることはなく
貧しい人の手は、全てのものに触れたがるので

心の底から安心することもなく
心の底から愛したいと願っています

だから簡単に詩を書いてしまっては
簡単に書いた詩に、追い詰められて
れて、壊れて
しまいそうになります


(本当は、とても綺麗な詩を書きたくても)

貧しい人の手は、いつかの夢を掴もうと
貧しい人の目は、いつか涙でないものに

満たされたいと願うほど

さも悲しげに
自分の貧しさを嘆いています




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