ただいま、という名前の人に/霜天
 
かで間違えていきたいからで
もう
覚めない嘘なんてなかった
響けばすぐに折れそうな背骨でここに立っている
ほんの、覚悟と角度でドアノブを回せば
君は、間違える指先の
先で

好きだと、ただいまという名前の人のうつむいている背中
不確かなもの、どうにでも



テリトリー、もうどこにも
とりあえず走って、また明日、まで
ただいま、そう呼んだ人
僕らは逢いたくて



そのことばが、途切れていく
昨夜止まってしまった時計の下
降り積もっていく一秒毎
そこからあの人が生えていく
追い抜く人も、立ち止まる人も
結局その顔を、覚えていかない
僕らは今日に駆け込んで、吊革に繋がって
陳列されると
かちり
目の奥で何かが、切れる音がする

ただいま、そう
もう一度逢いたい


運ばれていく
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