風に舞い風に歌う/恋月 ぴの
緋色の帯を解く君は頬を赤く染め
何だか恥ずかしげな風情だね
帯止めの色目は玉虫だから
綴られた思いも刻々とその表情を変え
真新しい紙とインクのほのかな香り
読みかけの頁に挟んだ栞のように
晩冬の渡り鳥は夕陽を目指し
しどけなく肌けた裾よけの調べよ
無惨と開く半襟の初々しさよ
いつかの日に歩んだ小径の在り処を
いつかの日に眺めた流れ星の行く末を
君は吐息混じりに千夜一夜と囁いて
総てを曝す君と僕の思いは混じり合い
絡み合い
ほころぶ花蕾は風に舞い 風に歌うよ
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