八月のバラッド/狸亭
寝そべって無為と怠惰に萎える
熱病のように蔓延する八月十五日の迎え火
おおぜいのひとびとがお互いにかわす
似たような挨拶の渦がきえるともう送り火
この二十八日には村松武司の三回忌がきます
名古屋から横浜から来ていた息子たちも帰ってゆきます
吉野令子の詩集『秋分線』がとどき文体にゆれる
はげしくあやしいくろい波間にみせられていきます
球児たちも画面からきえ蝉の声たかまるミゼラーブル
中国の核実験がありフランスまた狂気のマルセイエーズ
『エッフェル塔試論』松浦寿輝の華麗なエクリチュール
石から鉄へ 鉄から空気へ 空気から不在への系図
わが狸亭までとうとうエアコン侵略まさに世紀末的繁栄(カリカチュール)
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