夜をゆく子/木立 悟
 

音の火の列


谷底には
何もかも等しく壊す風がいて
神のように横たわり
弦の張られていない弓に
滅ぼされる夢に苦しんでいる


森のなかをすぎるたび
さまざまな花の花粉が着物について
誰にもわからぬかたちに咲いて
薄闇に淡く浮かんでいる


着物に弓の影が落ち
月は離れ ふるえている
器から器へわたされる魚
やがて光に変わる魚


手のひらを伝い降りてくるもの
数歩先の未来を照らし
ふたたび葉の目をふせるもの
夜のこがねを歩む素足
あたたかな流れに洗われてゆく









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