散歩/馬場 こういち
 
たとえば
昼の商店街を
そろそろと歩いていれば
思いもかけない
ありふれた日常が
ふと新鮮に映ることがある

八百屋のみかんが売れ残っている
床屋は暇そうに新聞を読む
居酒屋は閉まっている
若い男が自転車に乗って通り過ぎる
ラーメン屋から湯気が出る
古本屋の百円ワゴンはボロボロの文庫ばかり

ひょっとして
わたしはとおい未来から
来たのではないか
こんなにも
モノであふれている
いつまでも残っていてほしい

たとえば
どこかの国の旧市街を
ぶらぶらと歩くような
おちつかない
好奇心に駆られた目線で
地元の風景の中を眺めてみる



戻る   Point(4)