佞言/松本 卓也
人の多い交差点
一人佇む僕の影に
誰かがふと足を踏み入れる
それはまるで
心の中に入り込むように
さりげなくも図々しいもので
だからこそ思う事は
それが例えば誰かじゃなくて
僕の望む君であればと
思うのは自然な事
溶け合うように慈しむように
大切に抱えていきたいものがあって
それはきっと愛とかとは程遠く
でもたったそれだけに
人生を賭けてみたいとさえ思う
そんな日常をひたすら刻み込むように
記憶に探られる僕の心は
澱みをかき回されていく
人の往来僅かな堤防道
気がつけば毎日が
同じルートを辿るだけの日々
それだけの日常でも
人の心は変化を続け
心に潜む様々の思いも
いつの間にか整理する暇も無く
川に流れる木の葉のように
空に流れる雲のように
落ち着く事は無いんだ
ただ一つの存在になりたくって
ずっとずっと抱えてきていたものが
限り無く愛しく思うこの頃だ
それは心の歴史に刻まれた
終わりのない思いへ続いていく
そんな生き方が連鎖していく日々に
僕は一人 君という影に
時に脅えながら暮らすのだろう
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