残闇の口笛/たりぽん(大理 奔)
 
これから明けていくというのに
どんな闇より深い
口笛が
聞こえる

とぎれがちになるのは
灯台が
瞬くから
そして波が
騒がしい

そう、音が
熱をともなって
肌を
突きぬける

暮れたばかりの空を
残照と呼ぶならば
口笛の名は
残闇だ

黒をはらんだ朝が明ける
夜の記憶を
熱の輪郭を
なぞる

小さく細く
口笛で
そのひとの名を
吹きながら




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