空白/セキグチ アツ
 
不安であるのなら
そっと その空白を抱きしめてみればいい

解離した私のその 右腕と左腕は
まるで前からそうであったかのように 自然に
それを包むだろう

包んだ空白は きっと
紛れもなく空白で
けれど 貴方の温度を記憶しているはずだ
幾度となく抱きしめた貴方の・・・空白を?


何もない

残滓の残った

甘くしたのは貴方か

それとも片隅に置かれたアロマポットか

苦くしたのは貴方の言葉か

それとも貴方の髪をなでる右手と解離して爪を立てた左手か


わからないままに
その何もない空白を
解離した両手がまるで解離など
していないかのように甘やかな感覚の元で一つになって

そうして、まだ私は貴方を愛しているのだと

貴方はまたこの空白を満たしに帰るのだと

無根拠に安心するのだ
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