墓の裏/遊羽
墓の裏に回る
墓碑銘
一文字ずつ読み取る
故人も知らぬ名前の羅列に
隔たりの強き世界の境
墓の裏に回る
落とした影の淵に触れ
冷たきものに記憶を新たにし
遠ざかる時と近づく存在の
中間点の位置を考える
じっとしゃがみ込み
静かに涙を流す
あの時全く涙が出なかった分
墓の裏で静かに泣く
ふとそよぐ風の声
木々のざわめき
とても近くにいた事
とても近くにいる事
併せ持つ背中の小さゝに惑わされ
届かぬ声 届いている想い
墓の裏に回る
直線の冷たさに
故人との隔たりを
目眩がするほどに感じ取り
そっと呟く
次もまた
こゝで会いましょうと
誰にも悟られぬ感情を初めて表に立てゝ
墓の裏で佇む
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