眉尻/石畑由紀子
瀕死の人間の魂が電波を操れるわけはなく
だからあの明け方に二度鳴ったベルはあなたのおじいちゃんの仕業ではなく
単に誰かの間違い電話だったのだよ、 と言われ
冷静な私はそれを十分わかっているのだけれど
六番目の感覚を信じる私がそれを許さない
いいお天気の日に生まれた人は死ぬ時もいいお天気なんですって、 と
皺だらけのあたたかい両手を持つ猫背の老婆に肩を抱かれ
冷静な私はそれを気休めだと知っているのだけれど
どんな迷信にもすがりたい私がその言葉に頷いていた
抜けるような青空に煙が吸い込まれ消えてゆくのをずっと見ていた
肉体は魂を見送ったのちにその
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