かえりみち/木立 悟
冬の赤い実
ひとつのざわめき
低い煙が
一瞬だけ
白く白くひらめくとき
銀の雪道
すべるように過ぎてゆく人
まるく 遠く
鏡の奥へと去ってゆく景
見つめる瞳
雪の原
見えぬ手はそのまま見えぬまま
みな触れにきて色づいて
片方つむり 色づいて
見つめる瞳 色づいて
蒼は山から海からひろがり
原の上で結ばれて
昇るものたち 還るものたち
ゆらめくものたちの通る道
細く遠い道を照らしている
夜へと向かう白に降る
ひとりのかたち
見つめる輪
せわしく光る
山すその灯り
赤い実ふたつ
蒼と灰の手
原から昇る
ゆるやかになる
ひととき晴れて
白と青の指
赤子のような
無数のくぼみ
雪の原をわたりゆく
ふたつのふるえ
白のざわめき
見えぬままの手 重ねては
ふせた瞳
ふたつの赤い実の向こうから
いつか来る道
かえりみち
いつか澄む道
かえりみち
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