冬空の輪舞曲/恋月 ぴの
 
ふたりは出会う
雛連れの野鴨憩う山郷の水面は茜に染まり
 

  ほら手をつなご
  これから暫くふたりして
  同じ水脈を流れ行くのだから


ふたりのささ舟は
透き通る冬の気象にたゆたゆと揺れ揺れて


  ほら手をつなご
  気まぐれな空っ風のいたずらに
  離ればなれとならぬよう


枯れ田に歩む白鷺は
時の深さを測るように寒空へ届く鳴声ひとつ


  ほら手をつなご
  かじかむ思いをしっかりと
  あたためあえるように


いつの日にか
つないだ手を離すときは訪れる
その時はふたり笑顔で
いつまでも手を振っていたいから


緩やかに感じる雲の流れも
見つめる瞳は闇と交われば静かの淵へ ふたり


ほら手をつなご
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