セックスボランティア(R18)/宮前のん
万円の給料しかもらえないのが、その頃の平均的研修医だった。時給を計算したら200円に満たない月があって、労働基準法もへったくれもないなあと同僚と笑い合っていた事もあった。
それで、その夜も9時頃だったが、私は読まなければならない英語の文献を胸に抱えて、電気の消えた病院1階の廊下を、白衣のままひたすら医局に向かって小走りに急いでいた。やっと病棟の仕事から解放されて、早く夕食(大抵は宅配ピザか出前かインスタントラーメン)にありつきたかったし、少し仮眠も取りたかったし、さっき暗い図書室でコピーしたばかりのこの文献を明朝までに和訳しないといけなかったからだ。
だから、後ろから「す、すみませ
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