雨になる前に/
岡部淳太郎
冷えた夜が
低地を這っている
これもまたもうひとつの
忘れられた夜であろうか
――あの人は
貴重な生を召し上がりました
何ひとつ 言い残すことはなく
混沌の角度で経験は薄まってゆく
日の計算をうち捨てて
炎の尊称に鍵をかけて
つねに寒い日々がやってきた
北のほうは雪なので雪
ならば流れ出すことも
ないのでそのままで根
を生やして思いのまま
に固めて重量を増加さ
せることも出来るので
ここでは雪は降らない
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