ちいさなもの/黒田康之
なくしてしまった
ちいさなものを
どうしてもあたためたくなったので
ぼくはふゆのひざしのなかをあるく
ぼくにながれてくる
このふゆのひのかぜは
かなしいおととむなしいたいおんで
ぼくのこのこーとのなかにしのんでくる
そんなときぼくはどんなかおで
このふゆのひをいきていけばいいのだろうか
おそらくきっと
そのちいさなどうしようもないいとしさは
このひだまりのなかにあるとしんじて
あるいてみるしかないのだろう
つちぼこりいろのこーとにひざしがしみこんで
ゆったりとつかれたぼくのはなのおくに
はるのにおいと
やわらかなねむけがちょこんとすわり
ぼくをあたためてくれるおんがくを
ぼくのためだけにかなではじめるそのしゅんかんをもとめて
ぼくは
ちいさなものを
どうしてもあたためたくなったので
ふゆのひざしのなかをあるく
しかないのだろう
ああ
あるく
ぼくはあるく
戻る 編 削 Point(2)