ちいさなもの/黒田康之
 
なくしてしまった
ちいさなものを
どうしてもあたためたくなったので
ぼくはふゆのひざしのなかをあるく

ぼくにながれてくる
このふゆのひのかぜは
かなしいおととむなしいたいおんで
ぼくのこのこーとのなかにしのんでくる

そんなときぼくはどんなかおで
このふゆのひをいきていけばいいのだろうか

おそらくきっと
そのちいさなどうしようもないいとしさは
このひだまりのなかにあるとしんじて
あるいてみるしかないのだろう

つちぼこりいろのこーとにひざしがしみこんで
ゆったりとつかれたぼくのはなのおくに
はるのにおいと
やわらかなねむけがちょこんとすわり
ぼくをあたためてくれるおんがくを
ぼくのためだけにかなではじめるそのしゅんかんをもとめて

ぼくは
ちいさなものを
どうしてもあたためたくなったので
ふゆのひざしのなかをあるく
しかないのだろう

ああ
あるく
ぼくはあるく

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