おしべの気持ち/七尾きよし
 
ゆうべ一つの時代が終わった気がした。
それは春という生命の息吹きの季節の終わりかもしれないし
この世に生れたというだけで祝福されるに値される季節
夏の到来の予感かもしれない。
その中でぼくは春のまま。
夏を恋焦がれることが幸せで、
その道のりを踊りながら歩んでたら、
いつの間にか周りはもう夏。

閉じたつぼみの中で

「夏が来たら大輪の花になるんだ。
めしべと交わりきっと実を結ぶ。
 夏よ、ボクは君を愛してる」
って独り言をつぶやき続けてる。
でも
実は、つぼみの中にはおしべしか無く、
雌花をつける木は
はるか遠い国にあり
決して実を結ぶことのない
ことを
ぼくは知っている。
おしべだけの花






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