人形芝居/蒸発王
 

とある人形師が
水晶と真珠と白金を使つて
一体の絡繰り人形を作つた


(キリキリキリキリ)


人形は命も無いのに
笑顔で首を動かして


(キリキリキリキリ)


何時も縁側に座つてゐた

(キリキリキリキリ)

何日も
何月も
何年も


(キリキリキリキリ)

人形は笑つたまま座つてゐた


幾つ目かの秋が生まれた時
壱羽の駒鳥が
其の縁側を訪れた


(キリキリキリキリ)


駒鳥は澄んだ鈴の音で唄を歌つた
彼女は其れから度々縁側を訪れるやうになつた


(キリキリキリキリ)

人形は笑つたまま座つ
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