ハル/霜天
 
ハル
そう呼べば君は心から紛れていく
ありがとうという意味で
口のかたちを残して
狭い空に雨が降っていた
振り切れない景色を順番に巡れば
何度でも逢える気がしていた


ハル
繰り返してみれば
届きそうにもない日常ばかりで
少し間違えたと肩をすくめた場所も
いつでも循環していたようで
ハル、僕らの仕事は
あちこちで絡んだ糸を解いているうちに
取り残されてしまったみたいで

いつから巡っていたかなんて
どこに立ってもわからないけれど
それが時代だ、なんて言うのは少し悔しい
ハル、そこに行ければ
君の背中よりも遠い世界のこと、見えるかもしれない


 
[次のページ]
戻る   Point(5)