古き文/草風
厳しき寒さの合間の空に、ひねもす探す古い文。
宛名も忘れ引き出しの奥にしまいて幾久し。
見れば顔から火が出るほどに甘い文字など並びいて、
早く捨てればよいものを何故かは知らねど捨てがたく、
切手貼りても宛名無く何処の何方に送るやら。
懐かしき日の思い出は庭の焚き火にくべるほど
薄き煙に立ち昇る乾いた香りを名残にて
届けや春を歌いたる、戻らぬ遠き日々のもと。
出さざる文は彷徨いて誰にも届かずくべられて
煙は昇り空の中、いずこに行くやあても無く彷徨え心、
彼の日のままに。
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