オクターブの双月夜。/たりぽん(大理 奔)
 

歩道の残雪を
踏みしめる律動
声でもなく
音でもなく
歌でもなく

  白い吐息に飽きて
  見上げる
  大気の天蓋
  一弦の
  その楽器

  透明におびえ
  凍れる水たまり
  踏み割られる
  一弦の
  その楽器

耳鳴りの
寒さがつつむ
残雪の孤独
立ちすくむ
月夜

誰も私の
名を呼ぶな
音楽だけになりたい
だから私の
名を呼ぶな


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