悲しい歌/和泉 誠
激しい荒波に揉まれて
はじめてたくましくなれる
甘く優しい環境では
自分の身もろくに守れない
ひ弱な生き物にしかなれない
厳しく辛い境遇の中で
生き残るために必死で知恵をしぼる
幸せと呼ばれる安らぎを手に入れるため
果たしてついに手に入れた
自らの力で勝ち取った
待っているのは
とろけるように甘美な世界
皆が我にひれ伏し我を讃える歌を唄う
そしてその目は悪くなる
そしてその心は脆くなる
ひ弱な生き物に成り下がり
荒波で鍛えられた者に
その王座を奪われる
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