教室は包まれて/あやさめ
窓の少ない教室の四方は水の壁で
ゆがんだ光のような蜘蛛の糸で結ばれている
クリップを伸ばしたような針金じみた机の列が
右から左へきちんと並んでずっと黙っている
黒い帽子の集団がやっぱり右から左へ並んでいるが
黙っているふりをしているだけで実は眠っている
色とりどりの布のカタマリが規則正しく上下して
掲示板の文字の波打つように1つ2つ3つ
不定期に打ち付けられ時々地面に落ちる
「」の音が不釣合いなほど響いていく
誰かが後ろから見えないように
コマ送りの右手を差し出して
丸めたメモ紙をそっと投げ上げた
「ああ この眠たさ そして 冷たさ のゆえ に」
教室は水の壁に包まれて
右から左へとフィルムのように並んでいる
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