(幾つもの)ある午後/石畑由紀子
 
気に返る前に一枚描き上げて
 三時のお茶の時間がくるまでに
 今一度 その豊満なクッションの中に潜り込んでゆく
 最愛なるエミーリエに次はどんな服をデザインしてやろうか、なんて
 考えながら」

あの頃のあの人に出会えた白昼夢
恋人に肩を噛まれて我に返る




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三等身の影を連れた道の途中で
犬の散歩の老人とすれ違う。
犬がいることで成立する
見知らぬ人との無言の微笑み合い。




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ケサランパサランはフワフワと舞うばかり。私の手のひらを巧みにかわす。まるで言葉のように、さも愉しそうに。
(そうやっていつまでも裏切られていたい気がする)




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夜も昼も知っている月が
あなたのように笑う。
私は安心してその下で笑う。

自転車に乗って緑の風になる午後。





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