(幾つもの)ある午後/石畑由紀子
 
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忘れていたことすら忘れていたのに
嗚呼、忘れていたことを思いだしてしまった
思いだしてしまったことをいつかまた忘れられるだろうか




  ++


花の絵を描いていた。

ら、

絵 よりも
パレット のほうが
綺麗な色彩になっていて

ほおづえしながら なんとなく見とれて
ちょっと すねた。




  +++


「夜遊びを昼間のうちに済ませてしまったクリムトは
 未だ恍惚境の余韻に浸るモデルの股間を前に
 今度こそきちんと仕事にとりかかる
 デッサンは洞察力と勢いが命だから、と
 モデルのしどけない眼差しが正気に
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