渓流行/北村 守通
だぁれかさんが
だぁれかさんと
歩いていった
獣道
腕を切られて
足打たれ
腕を切られて
頬ぶたれ
だぁれかさんが
だぁれかさんと
仲良く並んだ
大岩に
腰掛け
ほおばる
握り飯
ぺしゃんと潰れた
握り飯
どこかにいるはずの
ヤマメや
イワナよ
今何処
どこかからか飛んできた
カワゲラに尋ねても
おろおろするばかり
身を震わせるばかり
だぁれかさんが
だぁれかさんと
打ち抜いてきたスポットに
届かず
入らず
宙を舞う
行き過ぎ
入らず
木に掛かる
勢い余って
行水す
だあれかさんが
笑ってる
イワナはどこかに
隠れゆく
ヤマメはどこかに
走り去り
今日も一日
一人ぼっち
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