真夏のノスタルジック・サイダー/成澤 和樹
気の抜けたサイダー片手にふらつく
「サイダーって林檎酒のことなんだよ」
そういって笑ってた気がする
まだヒマワリが太陽の代わりをしてたあの頃
一雨降った後の道は蒸してむせ返る僕の声も無視して
点々と水たまりの向こうまで飛んで呼びかけた君は
サイダーの甘酸っぱい刺激と共に陽炎と消えた
過去を飲み干し残った空き瓶
蹴飛ばして割ってみようか
ラムネでもないのにガラス玉とか期待して
鼻で笑ってカッコつけて
涙みたいなんて思ったりして
余計恥ずかしくなって
過去が完全に過去のものになったなんて
そう言って片付けずワレモノに背を向けるんだろう
花火でもしようか
振り返ればきっとすぐ現れる
浴衣姿でカランコロンはしゃぐ姿
その画はどんな映像より鮮明で
僕を先に進めなくしてくれる
でも飲み干したい
縛られてるんじゃなくて縛ってるのさ
真夏のノスタルジック・サイダー
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